キャスト・アウェイを観た

最近は療養中であまり外出できないので、
もっぱら家にいることが多い。
気分転換に、ネットで映画を観ることにした。
ここ2〜3年の自分の人生が「転換期」であるとハッキリ感じていて、
そんな話を友人としていたら、「この映画を見てみるといいよ」と教えていただいた。
「キャスト・アウェイ」という映画である。
あらすじ「フォレスト・ガンプ/一期一会」のトム・ハンクスとロバート・ゼメキス監督が再びコンビを組んだ人間ドラマ。飛行機事故で無人島に取り残された男の生還への孤独な戦いの姿を描く。映画の大半をトム・ハンクス一人で演じ、体重も25kgの減量に挑むなどの熱演を見せる。チャックはフェデックスに勤めるシステム・エンジニア。ある日、彼の乗った飛行機が太平洋上で墜落。奇跡的に一命は取り留めたものの、彼が流れ着いた先は誰もいない無人島だった……。<allcinemaより引用>
「現代版ロビンソン・クルーソー」かと思ったが、
そういった冒険活劇譚ではなく、もっと深い内容を描写している作品である。
恋人のケリーと婚約したばかりのチャック・ノーランドは、
仕事で乗っていた貨物飛行機が海に墜落したことによって、無人島に漂着する。
何もない、無人島にただ一人。
太陽は輝き、目の前にはヤシの木と、コバルト・ブルーの海岸。
美しい自然。
そして、圧倒的な孤独。
無人島で生き抜いていく場面の中で、
音楽や台詞は、ほとんどない。
あるのは風や波、雨、そういった自然の音だけである。
呆然と、途方に暮れるチャック。
乗っていた貨物飛行機に積まれていた貨物が、いくつか海岸に流されてくる。
それぞれのパッケージから出てきたのは、
ビデオテープ、離婚届、ドレス、アイススケート靴、
そして「ウィルソン」というメーカーのバレーボール。
孤独を紛らわせるために、チャックはバレーボールに顔の絵を描き、
「ウィルソン」と名付け、唯一の友とする。
木と水以外は何もない場所で試行錯誤しながら、ヤシの実を食べ、火を起こし、魚を獲る。
たった一人で、孤独の中、無人島を4年間生き抜いていく。
婚約者のケリーの写真を、心の支えにしながら。
ウィルソンとの会話(独り言)に、励まされながら。
厳しい自然の中で、数々の試練を乗り越え、
「生きる力」を鍛え上げたチャックは、
ある日海岸で「潮の流れが運んできた廃材」を見つける。
それを「帆にする」という決定的なアイデアを思い付き、
ヤシの木を切り、ビデオテープや木の皮をロープにして、
とうとうイカダを作り上げる。
イカダを漕ぎ出し、ついにチャックは、無人島から脱出して文明社会の現実へ戻る。
だが、そこで彼を待っていたのは、
自分はすでに「死んだもの」として認識されていた現実、
そして、更なる厳しいもうひとつの試練だった・・・。
映画を観て作品全体に通底するテーマとして感じたことは、
「孤独」と「運命」である。
結局は、人は本質的に「ひとり」である。
逆境や困難を乗り越える時、何かを決断し、一歩を踏み出す時、
まさにチャレンジしようという時、その瞬間は「ひとり」である。
生まれる時も「ひとり」死ぬ時も「ひとり」である。
入り口までは誰かが付いて来てくれたとしても、
ドアを開け、入っていくのは自分だけである。
誰かが助けてくれても、助けてくれなくても、
人から好かれても、嫌われても、それは補助的な要素でしかない。
最後まで自分に付いて来てくれるのは、自分しかいないのだ。
だから、
自分を信じること
自分を肯定すること
自分を愛すること
「自分と向き合うこと」が大切なのである。
人生において、どんなに抗っても運命に逆らえない時がある。
そして、過ぎ去った時間は決して取り戻せない。
チャックも、自分がいない間に変わり果てた現実を目の当たりにして、
「あの時に飛行機に乗らなければ・・・」と思わずつぶやく。
どうやっても癒やせない喪失感や、取り返しのつかない想い、
そういったものに苛まれる時が、人生にはある。
物語の後半で、
そんな葛藤に対する答えになりそうな、
印象に残るセリフをチャックは言う(今回は最後の「名言」として引用したい)
そして最後のシーンで、チャックは岐路の上に立ち、
微笑みながら、映画は終わる。
今、自分を傷付け、卑下し、苦しみ、悩み続ける人に、
この映画を観ていただきたい。
孤独に苦しみながら、それでも前に進もうとする人に、
この映画を観ていただきたい。
明日は明日の風が吹く。
これからどうするか?
息をし続ける。
明日も太陽が昇るだろう。
潮が何を運んでくるかなんて、
誰にもわからない。
チャック・ノーランド(トム・ハンクス)