プロが教える『人との距離感』で失敗しないための4つの方法
人間関係に悩む人の多くが、
コミュニケーションの「スキル」や「テクニック」を学ぼうとする。
しかし、そういったもの以前に、
多くの人が見落としている「大切なこと」がある。
コミュニケーションの基本は「相手との距離感」
私は元国営企業に17年間在籍し、
管理職として300人以上の部下をマネジメントした経験から、
コミュニケーションにおいて最も大切なことは、
「相手との距離感」であるという結論に至った。
相手との「適切な距離感」を読み、距離を保ちながら、
状況や必要に応じて、徐々に距離を縮めていくこと。
それが、人と上手にコミュケーションを取る為の「基本」だといえる。
「人との距離感」とは何か?
ここでいう距離感とは、もちろん「物理的な距離」のことではない。
相手との「心理的な距離」である。
「距離感の判断」を間違えてしまうと、相手とのトラブルに発展しやすい。
人間の心には「パーソナルスペース」というものがある。
「超個人的な心の領域」と言えるもの。
そのスペースにいきなり他人が入ってくると、圧迫感や恐怖、違和感を感じる。
「なんだコイツ馴れ馴れしいな」「ウザいな」など。
たとえ親しい間柄や家族であっても、
相手のパーソナルスペースに入る時は注意が必要である。
あなたが思春期の頃、突然オカンが無断で部屋に入ってきたら、
相当イヤだったはずである。
(自分の部屋は、心理的なパーソナルスペースでもある)
言うまでもなく、
それが「嫌いな相手」だったりした日には強烈な嫌悪感を感じる。
しかし、
自分が「好きな人」が入って来ると、ドキドキしながらも嬉しかったりする笑
信頼・尊敬している相手だと、相手との深い「心の繋がり」を感じる。
相手との距離感を間違えると、
つまり「まだ相手が受け入れる気がない状態」でパーソナルスペースに踏み込んでしまうと、
どれだけコミュニケーション能力に長けた人間であっても、相手に拒否される。
だから、まず相手との「距離感のバランス」を意識することが重要だといえる。
そして相手との距離感は、
「近過ぎる」「遠過ぎる」場合に問題が起こりやすい。
「人との距離感がわからない人」がやりがちな2つの失敗
①人との距離感が近すぎる
あなたが相手と親しくなりたいなら、
まず取り組むべきことは「信頼関係の構築」である。
信頼関係がない状態で「相手との距離」を近くしてしまうと、必ず拒否されたり嫌悪される。
「今すぐ仲良くなりたい!」と距離を近付けても、
信頼というカギがなければ、相手は心の扉を開いてくれない。
そして「相手との距離感が近ければ全てOK」という訳でもない。
相手との心理的な距離が近いほど、相手に対して感情移入することになり、
相手の「悩み」や「苦痛」を、自分も背負ってしまうことになったりする。
悪いものを「受けてしまう」状態である。
相手に対して期待が高まるほど、不満も増えていきやすいし、
「価値観の相違」による衝突も増える。
これは、「恋愛」「家族関係」にも同じことが言える。
好きな相手との距離を縮めすぎて引かれたり、
拒否された経験はないだろうか?
家族に対して、それが当然のように自分の意見や都合だけを押し付けて、
反発された経験はないだろうか?
パートナーも家族も、心理的な距離がとても近い。
相手との距離感が近くなり過ぎると、それまで見えていたものが見えなくなってしまったり、
逆に関係が煮詰まってしまったり、上手くいかなくなってしまうことも多い。
人との距離が近すぎる人の心理
- 相手の心情を観察していない(自分の意識・欲求・都合だけで動いている)
- 相手に対して、(本人的には)親切のつもりで「こうしなさい」と相手を変えようとする。
- 相手にベッタリと依存し、自分の不安を紛らわせようとする。
- 相手のことが好き過ぎてのめり込み、自分の欲求しか見えなくなる
- 相手を、自分の損得勘定で都合良く利用しようとする。
②相手との距離感が遠すぎる
相手との心理的な距離が遠いほど、相手の考え、心情が見えにくくなる。
お互いの意思の疎通が図れない「コミュニケーション不全」に陥りやすい。
相手の考えていることがわからないので、誤解を生みやすい。
上司と部下との「心理的な距離感」が遠過ぎる場合、
部下は「いくら頑張っても、この人は自分を評価してくれない」と感じやすい。
とにかくドライで殺伐とした「無味乾燥な関係性」しか生まれない。
こういった職場は多いのではないだろうか。
もしあなたが管理職なら、部下の承認欲求に対して常に意識する必要がある。
両親との心理的な距離を遠く感じると、子供は「自分は愛されていない」と感じる。
特に、不器用な父親が娘に対して素直な愛情表現ができず、
思春期に衝突することは多い。
相手との距離が遠すぎる人の心理
- 人間不信(過去に他人から否定されたトラウマから、相手と深く繋がることが怖い)
- 相手の心情に配慮し過ぎて近付くことを遠慮してしまう
- 何でも一人でやらないと気が済まない「一匹狼タイプ」
- 自身の劣等感・コンプレックスに起因する「こんな自分が近付いたら迷惑」という心理
- 相手のことに興味がない、もしくは関わりたくない
- 相手に対して警戒心、嫌悪感、不信感を持っている
人間関係のトラブルは「人との距離感の取り方の判断ミス」
結局、人間関係で生じるトラブルは、
「相手との距離が近過ぎて起こったトラブル」
「相手との距離が遠過ぎて起こったトラブル」の2つしかない。
人との距離感が取れない人は、
この人は好き=近い(毎日連絡したい!話したい!)
この人は嫌い=遠い(一切話さない!無視!) と言ったように、
「白か黒か」「0か100か」という、極端な関わり方をする人が多い。
人間関係が上手くいかなかったり、
ある特定の人との距離感が分からなくなったり、
恋愛がうまくいかなかったり、家族とのイザコザが絶えなかったりといった、
「人間関係の問題」が出てくる時、
この心理的な距離感を意識してみると、改善に繋がることが多い。
人との『距離感の取り方』が上手くなる4つの方法
①自分本位ではなく「相手が心地良い距離感」を尊重する
相手と良好な関係を築きたいのであれば、
相手との「現状の信頼関係」の度合いを見て、
「相手が心地良いと感じる距離感」を保つことを意識しよう。
相手が心地良いと感じる距離感を保つ事は「相手を尊重すること」に繋がる。
人が「知らない人」と知り合い、仲良くなろうとする時、
流動的に距離が近付いたり遠くなったりしながら、
徐々に信頼関係を深めていくものである。
相手の心情を観察しながら「相手中心」で距離を取る。
相手をよく見て、常に相手の距離感を尊重するから、結果好かれていき、
より良い人間関係を築いていくことができる。
②「中間の関係性」を意識する
人間関係は「仲が良い」「仲が悪い」の2つだけで言い表せるものではない。
まず、そこを知ることが大切である。
大人になるにつれて「仲が良くも悪くもない」という人間関係が増えてくる。
そもそも人間関係は「仲が良い・悪い」と言ったように、明確に分けられるものばかりではない。
人との距離感が取れない人は、そこを分かっていないことが多い。
だから、誰かと仲良くなりたい時に、相手に配慮せずに近付き過ぎてしまう。
逆に、友人が自分とちょっと距離を取ってきたら、
今まで仲が良かったのにも関わらず、急に心を閉ざして距離を置き過ぎてしまう。
「中間」つまり、
「ほどほどの関係性でもいいんだ」という認識を持つことが大切である。
③相手との「距離のバランス」を読む
例えば、趣味だけで繋がっている友達なら、
「どうしても親友になりたい」という場合は別として、
敢えて、友達の家族関係や過去の話などに踏み込む必要はない。
共通の趣味についてお互いに話し、
同じ時間を有意義に過ごすことが出来るだけで、それだけでいいはず。
しかし、人との距離感が取れない人は、
それが分からずに友達の家族関係について根掘り葉掘り聞いたり、
共通の趣味以外でも友達と繋がろうとして、一気に踏み込み過ぎるから拒否されたり、
友達との距離感が分からなくなってしまう。
また、最近では毎日SNSで友達と連絡を取り合っている人が多いが、
相手との距離感がまだ分からないのに、
頻繁にSNSで連絡を取り合おうとすれば、相手は戸惑うだけである。
時と場合、立場に合わせた「距離のバランス」を取ることを意識しよう。
④相手に対して「執着」しないように気を付ける
人や物事との距離感が上手な人は「のめり込まないように」と、
常に冷静で、客観的な視点を保つのが上手い。
何かにのめり込みやすい性格の人ほど、
他人や物事との心理的距離が近くなり過ぎてしまい、失敗する傾向がある。
性格的にサバサバしている性格の人ほど、心理的距離を保ちやすいのかもしれない。
相手に対して、「執着」をしないように意識しておきたい。
過度な「執着」が入った人間関係は、往々にして壊れる。
恋愛でも、相手を好きになり過ぎると上手くいかなかったりする。
自分のエゴや欲望だけで、相手と関わらないように気を付けよう。
もう「人との距離感」で失敗しないために
いかがだっただろうか?
もし今、人との距離感が上手く取れなくても、
相手の心情を意識して、実践を積めば、
人との「適切な距離感」の取り方が分かるようになっていく。
自分にも、相手にも心地良い距離感を見極めながら、
適切な距離感を取れる「バランス感覚」を、徐々に身に付けていきましょう。
明日は明日の風が吹く。