【音楽の神に愛された男】ブライアン・ウィルソンという孤高の天才
今回ご紹介させていただくのは、
私が最も尊敬するポップミュージック史の巨人。
「ブライアン・ウィルソン(Brian Wilson)」である。
本物の天才ブライアン・ウィルソン
The Beach Boysのメンバーであり、
数々の名曲を書き上げてきたソングライターである。
ポップミュージック史上、最も偉大な天才を挙げるとするならば、
私は迷わず「ブライアン・ウィルソン」と答える。
60年代末の同時期に「ビートルズ」という世界で最も有名なバンドがいたが、
ジョン・レノンにはポール・マッカートニーという、
最高のソングライティング・パートナーがいた。
そして2人の後ろには、ジョージ・マーティンという天才プロデューサーが付いていた。
ブライアンは、いつも1人だった。
しかし、ブライアンは「異常なレベルの天才」だった。
たった一人で、ビートルズと互角に渡り合えてしまう程に。
特にポール・マッカートニーは、
ブライアンを同じベース奏者・ソングライターとしてライバル視し、大きな刺激を受けている。
ポールが作曲した「Penny Lane」という曲のベースラインからは、
ブライアンが作曲した「God only knows」からの影響が見て取れる。
ブライアン・ウィルソンが生み出した「ティーンエイジ・シンフォニー」
ブライアンは膨大な数の名曲を発表し、今も尚現役で活動を続けているが、
彼が最も才能を発揮していたのは、
「Pet Sounds」から、未完成に終わった幻の傑作アルバム「Smile」までだといわれる。
私は高校時代の「最も感性が鋭かった時代」に、
ブライアンの幻の未完成アルバム「スマイル」の海賊版を、毎日貪るように聴き続けていた。
その頃すでに、膨大な数の60年代のポップ、ロックのアルバムを聴いてきたが、
「これが究極だ。人類史上、これより上の表現はない」という確信を持つに至った。
「Smile」が完成しなかったのも、納得がいった。
これは「人間の精神」の及ぶ領域ではない。
「天才が身を削って追い求めても辿り着けない領域」が、
ブライアンの目には見えていたのだろう。
ドラッグを多用しながら、1曲を完成させるのに半年間を費やしたり、
何度も何度も、同じ曲のたった数秒のパートを録音し続けた。
最後には精神を病み、レコーディングは頓挫。
その後、60年代後半から80年代までの約20年間、
彼は世捨て人として、自宅に引きこもることになる。
「Smile」の音源を聴いていると、
尋常ではないほどの「非言語の情報」が意識に飛び込んで来る。
音像に宿る「イメージを喚起する力」が、異常なのである。
「Our Prayer」を聴いた時は、彼自身が抱える途方も無い「哀しみ」が反転した美しさを感じ、
魂が震えるような感覚を覚えた。
「 Surf’s Up」を初めて聴いた時は、荘厳かつ神聖な深い海の「蒼色」を強く感じた。
ブライアンの自伝に詳細が書いてあるが、
彼は、日常的に父親から苛烈な虐待を受けるという、メチャクチャな家庭環境で育っている。
ブライアンは「暴君」のような父親との関係に踠き苦しみ続けた、
心に大きな傷を抱える、一人の繊細な青年だった。
深い「哀しみ」を知っている人ほど「優しさ」を表現できる。
深い「絶望」を知っている人ほど「希望」を表現できる。
私が高校時代、ブライアンの曲に救われたのは、
彼と同じような「絶望」「孤独」を感じていたからかもしれない。
ちなみに、高校時代にブライアンの作品と出会い、何十時間も聴き続けた経験が、
今、私のコーチングに物凄く役立っている。
私は「クライアントという音楽作品」を聴くようにコーチングを行う。
クライアントから発せられる「非言語の情報」を読み取る「感性」を、
ブライアンの作品を聴くことによって、養うことができた。
これは言葉で説明はできないのだが、
私の対面コーチングを受けた人は、なんとなくわかっていただけると思う。
本物のコーチングとは、先人達によって積み上げられた「叡智」と、
コーチ自身が持つ「感性」によって、初めて生まれるものなのだ。
ブライアンは、もうお爺さんになってしまったが、
来日コンサートがある度に足を運び、素晴らしいライブを観させてもらっている。
思えば、
彼はその「巨大な才能」と引き換えに、
大きな「業」を背負ってしまったのかもしれない。
子供の頃には虐待を受けて苦しみ、
青年時代にはポップミュージック界の頂点に上り詰め、
その後「Smile」の」挫折によって20年間廃人のような生活を送り、
人生の晩年になって奇跡の復活を遂げるという、まるでジェットコースターのような人生。
そして今は、世界中のファンに愛されながら、悠々自適に音楽活動を行なっている。
『人間、生きてさえいれば、何とかなる』
ブライアンを見ていると、勇気付けられる。
彼は、私が憧れるヒーローである。
明日は明日の風が吹く。