【世界と闘う建築家】安藤忠雄さんの講演を聴いてわかったこと
先日、知り合いに誘われて、
日本が世界に誇る「闘う建築家」
安藤忠雄さんの講演会に行ってきた。
パッと入って来た時の印象は「ヨレヨレのスーツを着た存在感のあるオッチャン」だった。
飄々とした物腰、身体の使い方。
後で、安藤氏は若い頃プロのボクサーだったと知り、合点がいった。
普段の表面には出さないが、意識に隙がなく、研ぎ澄まされている。
開口一番「私、何の為にここに呼ばれたか、よくわかってないんですが」
と言い、聴衆を笑わせていた。
スライドを交えながら90分ほどの講演だったのだが、とにかく話が面白い。
印象に残った言葉を書いていこう。
『人間は「どういう風に生きたいか」のヴィジョンが必要』
これは、コーチングで言うところの「ゴール」そのものである。
「ゴール」を設定しない人生は、
「海図を持たずに、大海原に船を出すようなもの」だ。
多くの人が「ゴール」を意識せずに生きているから、
横道に逸れたり、周囲に流されたりしてしまう。
安藤氏は、人生を生きる為に必要な意識について、こう述べていた。
「独立自尊」の意識を持ち、「教養」と「野生」を兼ね備えて生きる
これも「自分の人生に責任を持つことが、自分の人生の主導権を持つ為の前提」という、
普遍的な認識に基づいた言葉である。
これほどの領域の人物だと、やはり「人生の本質」をしっかりと心得ている。
コーチングについて知らなくても、自分自身をしっかりとセルフコーチングされているなと感じた。
『いつまでも青くあれ。熟れた赤いりんごはつまらない』
やはりここまで上り詰め、人生を切り拓いてきた人間には、飽くなき「情熱」がある。
高卒で、独学で建築の勉強をし、20代の頃に世界中を放浪し、見識を深め、
数々の斬新な建築を発表し「世界のANDO」と呼ばれるまでになった。
「学校が大事なんじゃない。勉強が大事なんだ」
いつまでも「青い自分」で、成長し続けることの大切さを熱弁されていた。
最近の活動についても話されていて面白かったのが、
札幌の「頭大仏」という建築作品である。
大仏の周囲を建築物で囲み、
外から見たら、ラベンダー畑の中に頭だけが見える。
国内はもちろん、中国などの諸外国からも、
連日たくさんの観光客が訪れるそうだ。
『「ここにしかないもの」を作れば、多くの人が来てくれる』
そう話す安藤氏の表情は、まるで青年のようだった。
それでいて、国という巨大な組織といくつものプロジェクトを進めたり、
世界の建築家とコンペで勝負する為に必要な、
「老獪さ」「手練手管の話術」は流石だった。
交渉の中で、自分の意見はキッチリと伝えつつ、
場合によっては「舐めとんのか」とも言うそうだ。笑
ご自身で話されていたが、
2014年ににすい臓がんが発覚し、膵臓と脾臓を全て摘出する手術を受けたそうだ。
安藤氏が医者に「膵臓と脾臓を取って、人間って生きていけるもんなの?」
と聞いたところ、
医者は『今まで元気になった人はいないので、
安藤さんには「初めて元気になったケース」になっていただきたい』と言われたそうだ。笑
安藤氏は、高齢ながら元気そのものだった。
人間としての生命力が、やはり強い。
それは心を溌剌として、情熱を持ち、
自分自身を啓発しながら生きてきたからだろう。
つまり、セルフコーチングである。
安藤忠雄氏は、コーチングの視点で見ても、
理想的な「マインド」を持っていた。
それは、彼自身から発せられる「在り方」から、
ハッキリと伝わってきた。
まるで、優れたコーチから薫陶をうけたような思いだった。
私も、人生を情熱とともに駆け抜けて生きたいと思う。
明日は明日の風が吹く。