リヴァプールの港町が生んだ奇跡のバンド The La’s（ザ・ラーズ）
英国のリヴァプールといえば、
「ビートルズを生んだ港町」として有名である。
説明の必要もない、世界最高のロックバンド。
だが８０年代末期からまさに９０年代に移り変わる時、
「ついにビートルズを超えるメロディメーカーが生まれた」
と、地元の音楽メディアを沸かせたバンドが登場する。
「ザ・ラーズ（The La’s）」である。
全ての曲のソングライティングを手がけ、ライブではアコースティックギターを、
まるで「リズム楽器」のようにコードをかき鳴らしながら、
仏頂面で、信じられないほど美しいメロディーを歌う男。
「頑固な天才」リー・メイヴァースが率いるバンド。
そして、数枚のシングルと、たった１枚のアルバムを残して消えたバンドである。
「The La’s（１９９０年作品）」CD, Original recording remastered
リー・メイヴァースという稀代の天才ソングライター
誰もが認める天才であり、完璧主義者でもあったリーは
「音」に対する偏執狂的なこだわりを持ち、
「自分が作ったものには、常に何かが欠けている」という思いに取り憑かれ、
ギターのチューニングに丸一日を費やすなど、
異常なまでのこだわりを持って作曲に取り組んでいた。
実際、そうやって彼が書いた曲は「魔法」としか表現できないような、
「特別な響き・ハーモニー」で、聴く人の心を震わせるような魅力に溢れていた。
レコード会社と契約を結び、
満を辞してファーストアルバムのレコーディングに入ったまでは良かったが、
リーはレコーディングした音源の出来に満足することはなく、
プロデューサーを実に７人も代え、
「音に魂を込める」という取り組みをし続けた。
デジタル録音を「音から魂が感じられない」と否定し、
６０年代のレコードの「アナログな音像」を追い求めて、
延々とアルバムの再レコーディングを続けたが、
業を煮やしたレーベル側が、
未完成だった音源を強引にプロデューサーにまとめさせ、
メンバーの承諾を得ないまま発売してしまう。
リーは、アルバムに関して「大っ嫌いだよ、ゴミだから買うな」とまで言い放っている。
才能に溢れたバンドの行く末は、少しづつ停滞していく。
リーは一人で延々とアルバムの再レコーディングを続けたが、
ドラッグの過剰摂取の影響もあり、段々と精神のバランスを崩して行ってしまう。
最後には、右腕とも言えるベースのジョン・パワーが脱退し、バンドは空中分解する。
本来なら、ここで物語は終わるのだが、後日談がある。
２００５年にザ・ラーズは突然再結成し、来日公演も行なっている。
私は、８月１１日に心斎橋クラブクアトロというライブハウスの最前列の真ん中で、
ザ・ラーズのライブを目撃した。
今までいろんなバンドのライブを見てきたが、人生最高のライブだった。
ライブ終了後、スタッフからステージ床に貼ってあったセットリストを貰うことができた。
今でも、自宅で大事に保管している。
彼らの最も知られた曲「There She Goes]
次の作品でレコーディングされるはずだった曲のホーム・デモ
既存の音源からファンが編集した「ベスト・ヴァージョン」
