【置かれた場所で咲く】「自分だけの役割」を見付ける事の大切さ
日本が誇る国技「大相撲」
日本古来の奉納相撲を起源とし、江戸時代から続く、
力士たちによって行われる神事であり、武道である。
土俵の上で、華々しく力士がぶつかり合う瞬間は、いつ見ても「真剣勝負」の緊張感、
高揚感を感じることができるものだ。
そういった花形の力士がいる一方、
当然ながら、勝ち上がれない力士もいる。
「勝負の世界」は、結果が全ての厳しい世界である。
そんな大相撲の世界で、
45部屋ある相撲部屋の中から「相撲メシ番付」の横綱に輝き、
「日本一のちゃんこ長」と評される男がいる。
櫻 正行さんである。
彼は、若手有望力士を多く抱える名門「高田川部屋」で、
「高田川部屋ちゃんこ長」を務めている。
彼は毎日、朝7時に料理を作り始める。
部屋の稽古が終了する11時までに、
およそ20〜30人前の料理を、7品ほど作り上げていく。
看板の「塩ちゃんこ鍋」はもちろん、手際良く「和・洋・中」満遍なく料理を作る様子は、
まさに「プロフェッショナル」を感じさせるものだ。
煮込みハンバーグを作ったり、魚をさばいて刺身にしたり、
若手力士が献立に飽きないよう、クリームパスタなども作る。
櫻さんが丹精込めて作る美味しい「ちゃんこ」が、
部屋の力士達のパフォーマンスを支えている。
彼らは口々に「櫻さんのおかげです」と言う。
部屋の親方にも「櫻はいなきゃいけない存在」と言わしめる。
なぜ、彼はこれほど真剣にちゃんこ作りに取り組むのか?
実は、櫻さん自身も現役の力士である。
そして相撲の番付は、部屋で一番下の序二段。
櫻さんは、テレビのインタビューでこう言った。
「強くなれなかったのは、自分のせいなんで」
「強くなれないなら、他のことやって、部屋の裏でみんなを支えたいなって」
櫻さんは「相撲の世界で、自分は勝てない」という現実を前にして、
悲観して、自暴自棄になるようなことはしなかった。
その現実を受け入れ、
「では、自分には何ができるか?」
「どんなことで、自分の価値を発揮できるか?」
「どうやったら、みんなの役に立てるか?」
と、前を向いて考え続けたのだ。
その結果「高田川部屋ちゃんこ長」という、
「自分だけの役割」「確固たるポジション」を見付けることが出来たのだ。
それは、有名な渡辺 和子氏の名言
「置かれた場所で咲く」ということ。
結婚しても、就職しても、子育てをしても、「こんなはずじゃなかった」と思うことが、次から次に出てきます。そんな時にも、その状況の中で「咲く」努力をしてほしいのです。
どうしても咲けない時もあります。雨風が強い時、日照り続きで咲けない日、そんな時には無理に咲かなくてもいい。その代わりに、根を下へ下へと降ろして、根を張るのです。次に咲く花が、より大きく、美しいものとなるために。
「置かれた場所で咲く」
それは、簡単なことではない。
人生には、少なからず「思い通りに行かないこと」や「挫折」が待っている。
ただ、それを乗り越えて、その葛藤・経験を「糧」にして、
それでも前に進み続ける人がいる。
その姿は、どんな華や宝石よりも美しい。
時には、立ち止まってもいい。しゃがみ込んでしまってもいい。
そして、その後には立ち上がって、前に進み続けられる人間でいたいと思う。
「今、生きていること」に、挫折や失敗にも感謝しながら、
人生を味わって生きたいものだ。
明日は明日の風が吹く。