「17年間いた会社を退職する」という体験
朝に目が覚めた時から、
一言では表現できない感情が湧き上がっている。
「万感の思い」とは、こういった感情のことだろうか。
今日をもって、私は17年間いた会社を退職する。
今日が17年間の「最後」だ。
20歳の頃に、この会社に来て17年。
ふと気付いたら、37歳になってしまった。
時が経つのは早い。
初めてこの会社に来た当時のことは、よく覚えている。
広大な基地の中、人がたくさんいて賑やかで、
日勤帯は、おばちゃん達とおっちゃん達が独特のゆるい空気感で仕事をしながら遊んでいる印象。
夜勤帯は、暴走族の集会場のような異常な雰囲気の職場だった(笑)
実際、有名な暴走族の元総長の方もいた(親分肌で良い人だった)
地元の評判の悪い高校の卒業生が、ほぼ全員会社に来る流れになっていて、
元ヤクザや前科者、アル中も珍しくなかった。
色んな人から金を引っ張って逃げた詐欺師もいたし、ホームレスみたいなのも多かったし、
とにかく、普段あまりお目にかかれないような「おかしい人」「変な人」
「キャラの濃い人」がたくさんいた(笑)
風紀もめちゃくちゃで、長髪はもちろん金髪の兄ちゃんもいたし、赤髪もいたし、
アフロの兄ちゃんもいた。
当時は北斗の拳でいう「修羅の国」状態であり、
弱肉強食の無法地帯だった・・・。
無法地帯なので「個人のパワー」「カリスマ性」の元に人が集まり、
それぞれ派閥というか、山賊団というか(笑)
そんな「混沌とした秩序」によって回っている会社だった。
ここで上手くやっていくためには「人間関係」がすべてだった。
「嘘」や「噂」「口撃」「罠」、そういった濁流の中を泳がなければ、
サバイバルできなかったし、本能的な「危機管理能力」がなければやっていけなかった。
とにかく、上も下も海千山千の人間が集う場所であり、伏魔殿のような会社だった。
今はもう、そういった人間の大半が定年や自主退職によって去り、
尖っていた人も丸くなり、
当時20歳で、右も左もわからなかった「元・引きこもり」の私も、
今では管理職として、部下に指導する立場になった。
この17年間、色んなことがあった。
数え切れないほどの苦難と不条理を経験し、
何度も心が折れそうになった。
「人生の節目」はやはり、
管理職に昇格し、1年目で潰れた経験だといえる。
会社の腐敗した体質を変えようと真っ向からぶつかり、
結果的に多くの人間を敵に回し、
最後はストレス過多でノイローゼのようになり、大きなミスをし、自滅した。
懲罰として日勤教育に送られ、それが終わってからボンヤリと
「これからどうするかな・・・」と思っていたら、
1人だけ「お前と話がしたい」と、ある先輩が会いに来てくれた。
その先輩は周囲の人望が厚い人で、自身も過去に大きなミスをしたが、
そこから這い上がった人だった(最後は本社に栄転していった)
その先輩が、私にこう言った。
「頑張れ。とにかくやれ。逃げるな。」
あの時、どん底まで落ちた時、
手を差し伸べてくれた人がいた。
あれがなければ、今の私はいなかったかもしれない。
心が折れたまますべてを諦め、負け犬として生きていたかもしれない。
そこから、私の「自分を成長させる旅」が始まった。
NLPやコミュニケーションスキルを学んだり、
集中力を鍛えるために速読を習ったり、
一流のメンタルコーチと個人契約して1年間コーチングを受けたり、
圧倒的な「結果」を出し続けている経営者から、
仕事に対する取り組み方、意識を教えていただいた。
直感で「この人に会うべきだ」と感じた人と会い、
「これを学ぶべきだ」と感じたことを学んだ。
少しづつ「ダメ人間の見本」のような自分が、
「劣等感の塊」のような自分が、成長していった。
成長すればするほど、自分が「問題」だと感じていたことが
「たいしたことではないな」と思えるようになったし、
他人に対して許せなかったことも、許せるようになった。
振り返ってみると、どん底まで落ちた時に
「覚悟」という名のスイッチが入ったのだと思う。
「自分は、こんな惨めな思いをするために生まれたんじゃない」
「自分の人生を変える」
「自分を成長させる」
そういった「覚悟」である。
「覚悟」によって、人は変わるのだと、
ハッキリと断言できる。
今はもう、職場で「問題」だと感じることは何もない。
誰のことも「怖い」と思わない。
他人を攻撃することは「弱さ」なのだと、気付いたからだ。
正直に言うと、少し寂しい。
「ああ、この会社に、この仕事に、愛着を持っていたんだな・・・」
そう感じている。
そして、もう思い残すことはない。
この会社の17年間に、感謝して去ることができる。
「こんな駄目だった自分を、成長させてくれてありがとう」
心から、そう言える。
あの時、辞めずに頑張って、本当に良かった。
自分自身に対して「17年間、お疲れさま」と言いたい。
さあ、前を向いて行こう。
ここからまた、新しいスタートだ。