仕事で「何度言っても変わらない人」の心理と対処法|「仕組み」で人を動かす4つの技術
「仕事に結果を、自分に誇りを」
ビジネスメンタルトレーナーの木下空です。
職場で部下、上司や同僚と。
もしくは、
ビジネスパートナーや外注先と関わっている時。
相手に対して、
「なんで、そういうことするの?」
「なんで、言ったのにやらないの?」
「なんで、同じミスを繰り返すの?」
「何回、同じこと言わすの?」
と、思ってしまうことありませんか?
目次
「この人、何度言っても直らない…」
たとえば、
・何回注意しても、同じミスを繰り返される
・何回指導しても、指示通りにやらない
・「わかった」と返事はするが、何も変わらない
・約束した納期や時間を守ってくれない
・「そういうところ良くないよ」と伝えても、全く改善されない
・「〇〇でお願いします」と伝えたのに、全然違うものが上がってくる
やるべきことをやらない。
やっちゃダメなことをする。
そういう時って、やっぱり相手に一言、言いたくなっちゃいますよね。
「あのさぁ…」
「そういうとこやで?」みたいな。
でも、良かれと思って
「アドバイス」しても、
「忠告」しても、
「指摘」しても、変わらない。
どうしたらいいのか?
今回は、私の中間管理職時代の経験と、心理学・行動科学の知見をベースに、
・「何度言っても変わらない相手」に対して、どう考え、どう対処すればいいのか?
・相手を変えずに「仕組み」で動かす4つの技術
をお伝えしていきます。
人が「何度言っても変わらない」4つの心理(原因)
私が元国営企業で中間管理職をしていた時、同じミスを延々と繰り返す部下や、絶対に意見を曲げない頑固な上司に頭を抱えた経験があります。
なぜ、彼らは変わらないのか?
そこには、明確な心理的メカニズムがあるんです。
1. 認知の歪み(正しく伝わっていない)
例えば、上司が部下に「ちゃんとやって」と言った時。
上司は「Aの手順で、Bのクオリティでやって」といった意味で言っている。
しかし、部下は「(自分なりのやり方で)頑張って」と変換して受け取っていたりする。
心理学でいう「認知バイアス」です。
人間の脳は、あらゆる情報を「自分の都合のいいように」解釈して受け取るもの。
つまり、相手は「無視している」のではなく、「自分は言われた通りにやっている(つもり)」
これが一番厄介なんですよね。
2. 現状維持バイアス(変化を嫌い、抵抗する)
人間の脳には、ホメオスタシス(恒常性)という機能があり、「変化すること」自体を本能的に嫌います。
「良くなる変化」であっても、脳にとっては「ストレス」なんです。
だから、良かれと思って「こう変えた方が効率的ですよ」と提案しても、相手は無意識に「否定された」「攻撃された」と感じてしまう。
特に、年配の上司やベテラン社員が変わらないのは、プライドの高さもありますが、根底にあるのは「今のやり方」を変えることへの恐怖と抵抗です。
・「今のままで問題ないだろ!」と怒る
・「前例がない」と言い訳を並べて拒否する
これらは全て、変化を食い止めるための脳の防御反応なんです。
3. 防衛本能による「思考停止」
相手がミスをした時、ついイライラした態度で接してしまうことがある。
人間は、相手からの敵意や攻撃を感じると、脳の「扁桃体」が反応し、防衛本能が作動する。
すると、脳は瞬時に「戦うか、逃げるか」の緊急モードに入ります。。
逃げるパターン(萎縮): 「どうすれば成功するか」ではなく、「どうすれば叱られないか」で頭がいっぱいになり、思考が停止(フリーズ)してしまう。行動を回避しようとしたり、普段なら出来ることすらできなくなる。
戦うパターン(反発): 「自分は悪くない」と正当化したり、こちら側に対して敵対心を持つ。アドバイスの内容ではなく「言い方」に反発し、耳を塞いでしまう。
どちらの場合も、脳の冷静な判断機能はシャットダウンしてしまう。
「何度言ってもわからない」のではなく、「感情的になり、話を聞ける状態じゃなくなっている」ということです。
4. 伝える側の「期待・執着」
これは少し、耳が痛い話かもしれません。
あなたの中に「一生懸命に伝えれば、相手は変わるはずだ」という期待(執着)はないでしょうか?
アドラー心理学では「課題の分離」と言いますが、相手がどう考え、どう行動するかは「相手の課題」です。 そこをコントロールしようとするのは、そもそも不可能なんです。
こちら側がコントロールできるのは、「相手への関わり方(指示の出し方や仕組み)」まで。
その結果、相手が変わるかどうかは相手が決めることであり、あなたが背負うべき責任ではない、ということ。
ちなみに、昔の私もそうでした。
「なんで伝わらないんだ!」と熱くなればなるほど、相手は心を閉ざしていく。
コントロールしようとすればするほど、相手は離れていきました。
今までの過去で、「相手を変えた」という経験は、実は「相手が自ら変わろうと思ったから変わった」ということなんです。
ただ、「何をやっても無駄なんだ…」と諦める必要はありません。
うまくいかないのは、「相手の性格」や「やる気」という、変えられないものを変えようとしているから。
変えるべきは、「やり方(仕組み)」です。
部下や上司、外注先やビジネスパートナー。
相手を変えずに動かすための、4つの具体的な技術(仕組み)をお伝えします。
仕事で「何度言っても変わらない人」を動かす4つの技術
①「言葉の定義」を具体化する
仕事において、曖昧だったり抽象的な言葉は、ミスやトラブルの温床になる。
「ていねいに」「なるべく早く」「しっかり」そういったフンワリした言葉は、なるべく使わないようにしましょう。
たとえば、
部下への指示で「しっかり確認して」ではなく、「このリストの項目1〜5を目視で2回チェックして」と伝える。
特に、起業家が外注先やパートナーとやり取りする際、「時間・納期」の定義は命取りになります。
「なるべく早くお願いします」
これだと、相手の「なるべく(気分次第)」に依存することになってしまう。
そこは、
「なるべく早く」ではなく、「12月5日の15:00までに納品をお願いします」と伝える。
重要なことほど、具体的な言葉、定量的な言葉を使いましょう。
相手が約束を破るというより、指示に「解釈の余地」があることが、トラブルの原因なんです。
言葉を「誰が聞いても同じ動作になるレベル」まで具体化すること。
これだけで、認知のズレは8割防げますよ。
②記憶を信用せず「外部化」する
「前に言ったよね?」
「すいません、忘れてました」
こういった不毛なやり取りをなくす唯一の方法は、「人の記憶力を信用しないこと」です。
記憶力って、わりと個人差があります。
何度もミスをする人は、心理学でいう「ワーキングメモリ(脳の短期記憶)」の容量が狭いだけかもしれない。
そんな相手に「気合で覚えろ」というのは、ちょっと酷な話です。
・チェックリストを作る
・マニュアルを目に見える場所に貼る
・アラート(通知)を設定する
脳の外側に「正解」を置いてあげることで、本人の能力に依存せずにミスを防ぐことができます。
③「合意」を可視化する(復唱と議事録)
指示を出した後に、「わかった?」と聞くのは、少しリスクがあります。
相手は反射的に「はい(わかったつもりor本当は自信がない)」と答えてしまうので。
代わりに、アウトプット(復唱)をしてもらいましょう。
たとえば、
「今の指示、認識がズレてないか確認したいから説明してみてください」とか。
このやり方には根拠があって、
学習定着率を示す「ラーニングピラミッド」では、人は「講義を聞く(受動的)」だけでは、内容の5%しか記憶に残らないと言われています。
しかし、「自ら体験する・他人に教える(能動的アウトプット)」を行うと、その定着率は90%にまで跳ね上がる。
つまり、部下に「自分の口で説明させる」ことは、単なる確認作業ではなく、相手の脳に深く記憶させるためのコツなんです。
さすがに毎回やるのはウザいですが、大事な時は復唱してもらいましょう。
これは、起業家がクライアントやビジネスパートナーと関わる時も同じです。
打ち合わせで盛り上がって「じゃあ、それで!」と口頭だけで終わらせるとか、わりとありがち。
ただ、時間が経つと、脳の短期記憶は急速に薄れていく。
心理学に「エビングハウスの忘却曲線」というものがあるんですが、人は1日経つと、聞いたことの7割近くを忘れてしまう。
そして、残った記憶も「自分の都合のいいように」書き換えられてしまうもの。
ビジネスにおいて、その時は双方が納得・合意したのに、後から文句を言ってきたり、約束を反故にするような人もいるじゃないですか?
そういったことを踏まえて、
「納期は○日、報酬は○円、条件は○○で合意」
という風にすぐにメールやチャットでテキストとして残し、相手に「承諾」の返信をもらうこと。
この「ログ(証拠)」を残すプロセスこそが、ビジネスにおける鉄壁の仕組みであり、お互いの信頼を守る保険になります。
(ただ、あまり嫌らしくならないように、自然な形でやりましょう)
④環境の最適化(適材適所の配置)
1〜3を徹底しても、それでもミスや問題が続く場合。
それはもう、能力や相性の「ミスマッチ」です。
ここで感情的になって怒っても、お互いに傷付くだけ。
リーダーの仕事は、人をマネジメントして成果を出すことです。
・その業務から外す
・ミスが起きても致命傷にならない配置にする
・外注先を変える
ドライに見えるかもしれませんが、「その人が輝けない場所から動かしてあげること」も、優しさであり、リーダーの重要な決断だといえます。
(実話)私が「伝説の部下・Gさん」を動かした方法
少し、私の体験談をお話しさせてください。
かつて私の職場に、「伝説」と呼ばれた部下がいました。
イニシャルで「Gさん」とします。
彼は、同じミスを永遠に繰り返す人だった。
あまりにも昨日言ったことを忘れるので、職場では「あの人は、毎日生まれ変わっているんじゃないか?」という説が飛び交うほどでした。
ただ、決して頭が悪いわけではなく、かなり優秀な大学を卒業されていた。
当時の仕事は2人1組でやるものだったんですが、周りは全員「絶対にGさんとは組みたくない!」と拒絶していました。
組んだ側の負担が相当増えるし、Gさんのミスで巻き添えを喰らうからです。
Gさん自身も、周りからの冷たい視線に晒され、居場所がなく、精神的に追い詰められているように見えました。
「安心感」と「都度指示」の徹底
ある日、私がGさんと組むことになりました。
周りは「木下さん、ご愁傷様…」みたいな空気。
ただ、私はいつも通りに冷静でした。
「別に、同じことを100回言ったっていいや」と。
私の目的は「Gさんを更生させること」ではなく、「今日1日、自分が望むクオリティで仕事を完了させること」だけだったからです。
そう割り切ると、「なんで毎回言わなきゃいけないんだ」という怒りは湧いてこない。
彼をどう「活用」するか、そこだけを考えました。
観察してみると、彼は複雑なことはできないけど、「都度指示された単純作業」なら、そこそこできることがわかった。
そこで私は、完全に「仕組み」を変えました。
・「これやっといて」と放置せず、毎回「次はこれをしてください」と1つずつ指示を出す
・「終わりました」と報告が来たら、「OKです。じゃあ次はこれ」と次の指示を出す
・自分の仕事をこなしつつ、適宜Gさんの作業をチェックする(ミス防止)
そして同時に、「彼を機能させるための関わり方」を実践しました。
他の人は、最初から「またミスするんだろ」というバイアス(偏見)とイライラを持って接していました。
するとGさんは、相手のイライラを察知し、萎縮してしまう。
前述した通り、人が萎縮すると脳のパフォーマンスは下がり、余計にミスを誘発する悪循環に入ります。
正直なところ、私はGさんのことが好きとか嫌いとか以前に、関心がありませんでした。
どうでもよかった。
彼が普段何をしようが、周りからどう思われていようが、関係がないので。
ただ、一緒に組む以上、私の目的(仕事をキッチリ完了させること)の邪魔をされては困る。
それだけでした。
だから私は、「彼をいかに活用するか」だけを考えました。
彼にミスをさせないためには、まず、萎縮させないことが最重要。
なので、私が普段やっている通り「和かに」振る舞いました。
淡々と指示を出しつつ、時には世間話をして、彼の緊張をほぐす。
結果、どうなったか?
その日、ミスやトラブルは一件も起きなかった。
Gさんは、萎縮することなく、指示通りに手を動かしてくれました。
ちなみに、Gさん以外にも様々な「強烈な個性」を持った人達がいましたが、私は全員と上手く関わりながら活用できていました。
さながら、「猛獣使い」のように。
相手の性格や能力を変えようとしなくても、こちらの「関わり方」と「仕組み」を変えるだけで、仕事は回る。
これが、私が現場で掴んだ原理原則です。
それでも変わらない人には「見守る」
4つの技術を尽くしても、それでも変わらない相手もいます。
そんな時は、どうすればいいのか?
結論から言うと、
本人が気付くまで、見守りましょう。
「いや、身も蓋もないやん…」と思いました?
ここまで手を尽くして変わらないなら、それはもう、どこまでいっても「本人の課題」だからです。
私の場合、昔オカンが「あんた勉強しいや!」と言っても、全く聞かなかったです。
ただ、今はこう思うんです。
「勉強しとけばよかったぁぁああぁ!!!!」と。
自分がとった行動で、「どんな結果が返ってくるのか」を本人が痛感しない限り、人は変わりません。
心から気付いて、「改めよう」と決めない限りは。
たとえば、
「自分のことばかりを考えて行動していたら、信用を失って人が離れていった」
「何も学ばず、いいかげんに仕事をしていたら、スキルや実力が身に付かず、いつの間にか取り残されていた」
「他人を批判したり叩いてばかりいたら、自分が批判されたり叩かれる状況に陥った」
とか。
何度も何度も痛い目に遭い続けて、ある時「本当に懲りる」わけです。
人が忠告を受け入れて変わるタイミングは、本人次第です。
なんなら、一生気付かないまま人生を終えていく人もたくさんいます。
「来世に持ち越し」みたいな?
ただ、それでも別にいいんですよ。
そもそも、私達はみんな未熟で、課題だらけなんだから。
課題を繰り返している人を見たら、「この人は、大切なことを学んでいる途中なんだな」という視点を持ってみると、楽になるかもしれません。
学び終えたら、変わっていきます。
「相手が気付くまで見守る」という意識
人それぞれ、長所があって、短所がある。
得意なこと、不得意なことがある。
あなたがクリアした課題を、今、取り組んでいる人もいます。
そして、その逆も然り。
私が元国営企業で中間管理職をしていた時、基本的に部下に対して「見守る」というスタンスで指導していました。
部下がミスをしそうな時、私がカバーできる範囲のことなら、敢えて何も言わず、ミスするのを見守ったりもしました。
実際に自分で体験しないと、本当の意味で理解できないですから。
お互いが、お互いの課題を補い合いながら、助け合っていくのが仕事だと思っています。
支えたり、支えてもらったり。
カバーしたり、カバーしてもらったり。
相手ができないことを、あなたはできる。
あなたができないことを、相手はできる。
ただ、それだけのことなんです。
どうしても相手に伝えたいときは
そして、もしどうしても相手に「人として」忠告したいのであれば、その場の感情ではなく、「愛」から言えるかどうか?を、判断基準にするといいかもしれません。
アドバイスに「コントロール」や「怒り」を感じたら、相手は絶対に変わらないし学ばない。
その時は態度を改めたとしても、「自分で得た気付き」じゃないので、また繰り返します。
なので、もし相手の態度や行動に指摘や忠告をしたくなったら、
「今、本当に相手のためを思っているかな?」
「自分のエゴや感情で言ってないかな?」
と、一度立ち止まるといいかもしれません。
「人」を変えるのは難しいですが、「やり方」は一瞬で変えられます。
今日紹介した4つの技術、まずは一つから試してみてください。
応援しています。

